プロフェッショナル人材重視かマルチ人材重視か・・・
こんにちは、景嗣です。
今日は、集団内で人材を育成するにあたり、プロフェッショナル人材を育てることに重点を置くべきか、マルチ人材を育てることに重点を置くべきか、について考えてみようかな。
思うに、集団内でどういう人材を育てていくかという問題は、「集団」っていうのを、社会全体と見るのか、都道府県と見るのか、それとも企業体と見るのか、家族と見るのかによって、答えが変わってくるように思う。また、その「集団」がどういう目的を持っているのか、何を重要視するかによっても変わってくるように思う。今回は企業体をイメージして考えてみよう。
育てる人材像は、大きく分けて「プロフェッショナル人材」と「マルチ人材」の2つに分類できると思う。以下にこれらの人材の特徴について説明してみる。
プロフェッショナル人材ってのは、ある分野に関して深い知識・経験を有している人材を指す。いわゆる専門家ってやつだ。プロフェッショナル人材を育てようとする場合、長期間彼を一つの部署の仕事に従事させる必要がある。そのため、専門分野に関する問題解決を得意とする反面、専門外の問題を提起された時にはあまり役に立たないという特徴がある。
マルチ人材ってのは、「これ」という得意分野はないものの、当該集団における様々な仕事をまんべんなくこなすことができる人材を指す。名前のとおりマルチプレーヤーである。マルチ人材を育てようとする場合、何年かごとにジョブローテーションを経させ、彼に様々な仕事を経験させる必要がある。そのため、ある程度のジョブを経験させたら、他分野の問題についてもある程度の理解を示せる反面、プロフェッショナル人材に比べれば、問題解決能力は劣るという特徴がある。
企業ごとに個体差はあるし、必ずしもすべてが当てはまるわけじゃないけど、企業内の人材の育て方は、概ね、次のような傾向になってくるのではないかと思う。
起業当初の社員は少ない。社長自身がマルチプレーヤーとなって、営業活動し、生産管理・部材発注を行い、製品をつくり納品するといった実務活動をする傍ら、経理や人事といった管理部門の仕事を行う、ということも少なくない。
実際、前の職場で取引していた板金業者の中に、全部独りで会社運営している人がいた。必ず納期は遵守してくれるし、いいモノつくりよるし、(その分金額は高かったけど・・・) 本当に素晴らしい方でした。
社員がまだ数人であるうちは、一人でも欠けたら仕事が回らなくなる可能性があるため、社員には社内の業務を万遍なく把握させておくのが好ましい。まだマルチ人材が重宝される段階である。
企業規模が大きくなるにつれて、分業が行われ始める。営業部門、設計部門、購買部門、生産部門、みたいな感じだ。そうなると当然各部門に何らかの「必達ノルマ」が課せられる。そうなると、いかに効率よく生産性を上げるか、というのを「会社全体」ではなく「部門単位」で考えることになる。
単純に、企業規模が大きくなるにつれて、捌かなければならない仕事の量・難易度も当然上がってくる。各部署にプロフェッショナル人材を配置して、フェーズごとに正確かつ迅速に仕事を回してもらう方が合理的であるし、部門の生産性が上がり、ひいては全社的に生産性が上がってくるだろうという考え方だ。
ここまでの話の流れだと、会社が成長するにつれて、マルチ人材重視からプロフェッショナル人材重視に移行していくのが望ましいという結論に落ち着きそうだ。
これについて、僕はまだ結論を出すには早いなと思ってる。ここからは僕の体験談を中心に話を展開していこうと思う。
僕の前の職場は、完全にプロフェッショナル人材育成の考え方だった。基本的に一旦所属したら、ずっと営業、ずっと設計。各部署にやり手のプロフェッショナルが存在する。
しかし、他の部署の内情については一切干渉しない、理解もできやしない。役職付きの人であっても、工場のトップは組み立てしか経験したことない人だし、包括的なトップは営業職しか知らないような人だった。
みんな自分の持ち仕事以外の事情が一切わからない。
思うに、これが結構マズイのである。
こっちの立場からすると明らかに無理な注文を簡単に言ってくるのである。
「板金いつ上がるんじゃ!!」
「んー、今からプレス屋に飛ばして、そっから加工仕上げて、色上げるから、最低でも2日は見といてください」
「はあ? 納期やばいねんぞ。今日中に作れや!! どうせお前、注文するだけなんやろが!!」
「(ブチィ!!) うるせぇジジイ!! 図面出たんさっきやねんから、できるわけあれへんやろが、俺は魔法使いちゃうねんぞ、ボケがぁ!!」
やー、、、殴り合いの一歩手前である。
僕自身、設計の苦労も知らないで、「クソ図面あげてくんなや!!」とか、けっこうヒドイこと言っていたな。。反省。。
ほんの小さいことであるが、みんな自分自分ばかりでギスギスしてくるのである。
また、営業は生産キャパシティーを明らかに超えた受注を大量にとってくるし、営業上がりのトップもそれを承認する。営業のプロフェッショナルは生産の事情を一切理解しようとしないからである。
案の定、工場内はぐっちゃぐちゃの混乱状態である。そこまでくると当初の納期でつくれる製品は指折りほどの数しかない。そんな状態である。さらに工場内全体がギスギスしてくるのである。最終的にお客様を裏切る危険性もある。
何度か別部署の人間と情報交換する機会があった。
「何もわかってねぇな。コイツらアホじゃねぇの??」こう感じる瞬間が何度もあった (特に営業と設計とは話が合わんかった)。
ところかわって。
ある日、いつものように仕入れ先の板金業者に板金製作の案件を振りに行った時のことである。営業担当者Tさんは、営業兼副工場長兼経理担当である。いわゆる、社内におけるマルチ人材である。
彼はその板金製作の案件を断ってきた。曰く、「その案件を受けると明らかにうちの生産キャパを超えてしまいます。仮にその案件をとって納期どおりに作れなかったら、かえって景嗣さんの迷惑になってしまいます。今の状況ではその可能性が高いのです。今回は見送らせてください。」
プロフェッショナル人材ばかりのうちとは正反対の、社内全体のバランスを把握した冷静な判断だと感じた。当たり前の発言だが、あまりにも的を射ていて、やけに胸に刺さった。
どんな人材をどのように育てていくかということについて、正解は存在しない。
頭で考えていくと、企業を部門ごとに分けて、部門ごとにプロフェッショナル人材を配置し、部門ごとの生産性を上げれば足りる、となりがち。
しかし、実務に出てくると、一つの部署の殻に閉じこもることの悪い面が見えてくるようになった。
少なくとも、僕が「こういう上司がいてくれたらなぁ」という理想の上司像としていつも頭に思い描いていたのは、マルチ人材の上司だった。
これは、企業組織以外のことにも通ずるのではないか。
気の合わない夫婦。真因はお互いの苦労を理解していないことにあり、数日ジョブローテーションして、相手の苦労を知れば、少しは心の距離が縮まるんじゃないかな。
武道の足払い。サッカーの蹴りと通ずるものがあったらしく、サッカーをやってから上手くなったという者もいた。武道至上主義で球技の食わず嫌いは体感できないことである。
まあ、プロフェッショナル人材もマルチ人材も一長一短、お互いにバランスよく補完し合えるくらいのバランスで育てることが大事だろう。
企業規模が全体的に大きくなる傾向にあり、業務内容がますます高度化する現代において、プロフェッショナル人材に焦点が当てられがちであるが、そういう情勢の中で、マルチ人材が必要な場面がいくつもあるように思う。
やっぱ世の中バランスが一番でんな。
以上
景嗣
難しいようで、答えは最後の一文に集約されてると思う
全く同感
マルチもプロフェッショナルも共存してこそ成り立つ
そこで重要なのはリアルタイムな情報の共有
逆を言うと、情報の共有ができない、しない事はマルチ、プロ以前のへったくれにもならない
ワンマンでやってるならまだしも、集団の中の個である以上、それができないと道端の石ころになりかねない